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法人成りに適したタイミングとは?売上や所得の基準、法人成りのメリットも紹介!

法人成りに適したタイミングとは?売上や所得の基準、法人成りのメリットも紹介!


法人成り(法人化)とは個人事業主やフリーランスの人が法人を設立し、個人で営んでいた事業を法人に引き継ぐことです。法人成りには節税や事業拡大等、さまざまな面でメリットがあります。個人で営む事業が順調であれば、法人成りを検討しても良いといえます。

 

法人成りは最適なタイミングで実施することでより大きな効果を得られます。とはいえ、「いつ法人成りをするべきなのか」「そもそも法人成りってしないといけないの?」このような疑問をお持ちの人も多いのではないでしょうか。

 

今回は法人成りに適したタイミングや、法人成りをするメリットについて詳しく解説します。

 

法人成りに適したタイミング3選


法人成りに適したタイミングの代表例は以下の3つです。

 

  • 事業所得が600~800万円を超えるタイミング
  • 事業の課税売上高が1,000万円を超えるタイミング
  • 事業拡大を検討・進めたいタイミング

 

個人事業主やフリーランスの方が上記のいずれかに該当した場合、一度法人成りを検討しても良いでしょう。

 

なぜ法人成りに適したタイミングといえるのか、それぞれ理由を詳しく解説します。

 

事業所得が600~800万円を超えるタイミング

法人成りに適したタイミングの代表例が、事業所得が600~800万円を超えるタイミングです。

 

課税所得が一定を超えた場合に法人成りをおすすめする理由として、所得税と法人税の仕組みの違いが挙げられます。

 

所得税は超過累進課税を採用しています。超過累進課税とは所得が一定を超えた場合、超えた部分に対してより高い税率を適用する仕組みです。税率は7段階に区分されており、最大で45%となります。

 

一方、法人税は金額に関係なく一定の税率が課される比例税率です。資本金1億円以下の普通法人であれば、所得額800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%の税率が適用されます。

 

以上の理由から、事業所得が大きい場合、より低い税率である法人税の方が税額を抑えられる可能性が高いです。

 

一般的に事業所得が800万円を超えると、所得税よりも法人税の方が税額を抑えられるケースが多くなります。条件によっては、より早い段階で法人税と所得税の税額が逆転する可能性もあります。

 

最も節税効果が高いタイミングで法人成りをするために、事業所得が600万円を超えるタイミングあたりで専門家に相談するのがおすすめです。

 

事業の課税売上高が1,000万円を超えるタイミング

事業の課税売上高が1,000万円を超えるタイミングも法人成りに適しています。正確には、以下のいずれかに該当する場合は法人成りによるメリットが大きいです。

 

  • 2年前の課税売上高が1,000万円超
  • 前年前半(1月1日~6月30日)の課税売上高が1,000万円超かつ前年前半の人件費が1,000万円超

 

このタイミングでの法人成りをおすすめできる理由として、消費税免除の仕組みが挙げられます。

 

消費税は、その課税期間の基準期間(課税期間の2年前)における課税売上高が1,000万以下であれば納税義務が免除される仕組みです。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたら、その2年後は消費税の納税義務が生じます。

 

また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間(前年の1月1日~6月30日)の課税売上高が1,000万円を超えた場合は納税義務が発生します。ただし特定期間における1,000万円は給与等支払額の合計額で判定することも可能であり、給与等支払額が1,000万円以下であれば翌年の消費税納付義務は発生しません。

 

消費税の免税要件は、個人事業主および資本金1,000万円未満の新設法人に適用されます。すなわち個人事業主としての課税売上高が1,000万円を超えても、課税事業者になる前に法人成りをすれば、その後最大2年間は消費税の免税事業者のままでいられるのです。

 

事業拡大を検討・進めたいタイミング

所得や売上が紹介した基準を超えていなくても、事業拡大を検討・進めたいと考えているのであれば法人成りを検討しても良いでしょう。

 

事業内容や理念がまったく同じ場合、個人事業主よりも法人の方が社会的信用を得やすい傾向が強いです。社会的信用の得やすさは以下のメリットにもつながります。

 

  • 金融機関からの融資を受けやすい・より好条件で融資を受けられる
  • 新規案件や取引先を獲得しやすい
  • 求人への応募が多くなりやすいため採用が進めやすい

 

いずれも事業拡大を進める上で有利になる要素です。事業拡大を効率良く進めるために法人成りを検討するのも良いでしょう。

 

法人成りをするメリットとは


個人事業主・フリーランスのままでも事業を続けることは可能です。しかし、事業が順調で規模が大きくなってきたのであれば、法人成りをした方が大きなメリットを得られる可能性があります。

 

法人成りによる主なメリットは以下の3つです。

 

  • 節税効果を得られる
  • 社会的信用を得やすくなる
  • 決算のタイミングを自由に決められる

 

それぞれ詳しく解説します。

 

節税効果を得られる

法人成りによる大きなメリットの1つが、節税効果を得られる点です。

 

すでに紹介したように、所得税は超過累進課税、法人税は比例税率を採用しています。所得が小さいうちは所得税の方が税額を抑えられますが、所得が一定を超えると法人税の方が低い金額となります。

 

また、消費税の免税要件についても紹介しました。2年前の課税売上高が1,000万円を超えた個人事業主は、消費税の納付義務が生じます。しかし、資本金1,000万円未満の新設法人は消費税が最大2年間免除されます。すなわち課税売上高が1,000万円を超えた後、課税事業者になる前に法人成りをすることで、消費税の免税期間を延長できるのです。

 

このように、適切なタイミングでの法人成りは大きな節税効果が期待できます。

 

社会的信用を得やすくなる

法人は個人事業主よりも社会的信用を得やすい傾向です。理由として、以下の3つが挙げられます。

 

  • 法人には登記の義務がある・外部の人も登記事項証明書を閲覧できる
  • 法人は個人事業主よりも、事業を継続して営むことに対する責任が重い
  • 法人は社長1人の場合も社会保険の加入が義務付けられている

 

前章で紹介したように、社会的信用の得やすさはさまざまなメリットにもつながります。事業拡大のためには法人成りが必要といえるでしょう。

 

決算のタイミングを自由に決められる

所得税は確定申告のタイミングが明確に定められています。事業内容や業種によっては繁忙期と確定申告の時期が被ってしまうケースもあるでしょう。

 

一方、法人は決算のタイミングを自由に決められます。決算期を業務負担が軽い時期にすれば、決算作業による本業への影響を最小限に抑えられます。

 

まとめ


個人事業主・フリーランスが法人成りをするのに適したタイミングを3つ紹介しました。適切なタイミングで法人成りができれば、法人成りによるメリットを最大限に享受できるでしょう。

 

ただし、法人成りに適したタイミングを正確に判断するのは困難です。また、法人成りのためにはさまざまな作業が必要であり、専門知識のない人がすべて自分で行うのは大きな負担になる恐れがあります。

 

最適なタイミングで法人成りをしたい・法人成りをスムーズに進めたいと考えるのであれば、専門家に相談するのが安心です。