【ポイント】
- 売上認識のタイミング:国内売上に比べ、輸出売上の認識タイミングは遅くなる
- 消費税の取り扱い:輸出売上については、日本の消費税が免除される(輸出免税)
海外に拠点を持たないで、単純に日本から製品を輸出しているだけであれば、国際税務の観点からの留意点はそれほど多くありません。
輸出売上も国内売上と同じように、売上から生じた利益(所得)に対して、日本の法人税等が課税され、基本的に海外で課税されることはないためです。つまり、国際税務の基本的な問題である「二重課税」を心配しなくてもよいといえます。
売上認識のタイミング
会計上、収益に関する会計処理については、「収益認識に関する会計基準」が2021年4月1日以後開始事業年度から強制適用されており、税務上も、これに合わせて税制改正が行われています。
国内売上の場合、従来から多くの企業が国内倉庫からの出荷時点で売上を計上しており、収益認識会計基準の適用によっても、この実務に変更はないと考えられます。
一方、輸出売上の場合、貿易条件にもよりますが、FOBやCIFといった貿易条件では、いずれも本船への引渡し時点でリスクが移転するため、船積時点、具体的には、船荷証券発行日で売上計上するのが一般的であったものと考えられます。この点については、収益認識会計基準の適用によっても、輸出売上の計上に関する考え方に大きな変更はないものと考えられます。
2018年度税制改正後の法人税基本通達においては、棚卸資産の引渡しの日(=売上認識のタイミング)として、「船積みをした日」が新たに追加されています。したがって、輸出売上については、売上を計上して納税を行うタイミングが、国内売上よりも少し遅くなります。
税務上、売上認識のタイミングは、「いつ税金を支払うか」という問題です。つまり、今年納税するか、来年納税するかという期間の違いです。海外に拠点を持っていると、「将来的に取り返せない税金の発生」という問題に直面するケースも多々ありますが、それに比べると、重要性は低いと考えられます。
消費税の取り扱い
輸出売上については、消費税の取り扱いが国内売上とは異なります。
国内売上の場合、日本の消費税が課税され、得意先に消費税分を上乗せして請求する必要がありますが、輸出売上については、日本の消費税が免税になります。したがって、輸出売上については、得意先に消費税を請求する必要はありません。
なお、消費税の課税売上割合の計算においては、輸出売上は分母・分子に算入されるため、消費税の控除額に影響を与えることはありません。